今年こそ熊にゃ喰わせね~ぞ!

今日のおらの冒険は山の中じゃなくて

登山バスがひっきりなしに通る道端だ

でもこんな薮じゃない所こそ

大型動物が頻繁に行動する場所なのだ

青い空の下には

春一番先に薄黄色い花を咲かせるダンコウバイが

アヒルの水かきのような緑の葉っぱを付けて茂っている

そのダンコウバイに葛の蔓がぐるぐるぐるぐる巻きついて

葉っぱの陰に隠れるようにしながら

紫色の花を房にして咲いていた

でもよく覗き込まないと見えないから

遠くからは緑色にしか見えないんだ

青い空の下に大きな大きな緑の壁のような木があって

薄みどり色と黄色とそれから朱色と赤い色が

青い空と緑色に映えて

まるでキャンバスに描かれたように浮かび上がっていた

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近寄っていくとその薄みどり色と黄色と

それから朱色と赤い色はウワミズザクラの実だった

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春には真っ白い綺麗な綺麗な花が房になって咲く

あのウワミズザクラだ

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あまりにも綺麗だったから

おらは暫くのあいだその場に立ちすくんでしまった

風がウワミズザクラの葉っぱの間を通り抜けていくと

ザワザワ~…ザワザワ~って

ウワミズザクラがウワミズザクラ語で

おらに話しかけてきた


いいところへ来てくれたよ!

本当は実が熟れるまで育てたいんだけどな

おいらの実は熊公が大好物でな

いつもこの時季になると食べにやって来るんだ

そこまで言ってウワミズザクラは

寂しそうな顔をして黙ってしまった


うんうん…それは

毎年見て知っているから気の毒だと思っていたよと

おらはウワミズザクラ語でウワミズザクラに話しかけた


また風がウワミズザクラの葉っぱのあいだを通リ抜けた

ザワザワ~…ザワザワ~


ウワミズザクラはウワミズザクラ語でまた話し始めた


食べられるのはいいんだけどな ザワザワ~…

熊公の野郎ときたら

おいらの手足を見境なくへし折って行きやがるんだ

おいらの兄弟なんか気の毒だったよ

根元からぼっきり折られちゃってさ

まぁ 不幸中の幸いってやつで

皮一枚が残ってたから何とか生きながらえたんだけど

あれじゃぁまた花を咲かせられるまでになるには

何年かかることやら ザワザワ~ザワザワ~…


ウワミズザクラの愚痴話はしばらく続いた…が…

結論は…

熊公に身体をズタズタにされる前に

この実さえなければとりあえず生き伸びられる

だからせっかく育てた子供には可哀想だけど…

あんたにこの実を採って帰って欲しいってことだった


おらは…ウワミズザクラのたっての願いを聞く事にした

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…っと言うよりも本音のところは

この実で造ったリキュールは香りといい味といい

中々のものなのだ

おらは本当に気の毒そうな素振りを見せながら

実のところ…

ウッシッシ~!て気持ちを押し隠しながら

ウワミズザクラが大切に育てた実を摘み始めた

摘み始めて初めて気が付いたんだけど

若い実は先端が尖がっているけど

赤く色着く頃になると丸くなるんだね

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