あぶちゃん日記

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<<   作成日時 : 2013/02/11 08:19   >>

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 あの日は、大相撲の関脇「栃司関」の引退相撲に招かれて両国国技館へ行っていた…
二日前に「曙」が横綱に昇進して、国技館での初めての横綱土俵入りを見ることができ、栃司関の引退相撲と断髪式が終わってから、イチマサ社長と浅草に繰り出した。
男の裸を見た後はやっぱり女性の裸を観るってもんだべさっていう事になって、R座の客となった。
R座は日本でも有名なストリップ劇場で、其処に出演するダンサーたちは、雑誌のグラビアに登場する絶世の美女ばかりが出演する所だ。
ファンファーレが鳴り緞帳が上がると、ドライアイスの靄の中から素晴らしいプロポーションの裸体がシルエットとなって現われ、やがて色とりどりのライトに照らされてスッスッスンバラシク綺麗な姐ちゃんの裸体がおら達の目の前に立った。
何十年も若い女性の裸を見た事のないおら達の全身は緊張しちまった。
ドサ周りのダンサーと違って、客に媚びるわけでもなく、おら達に目線を向けるんだけど実に美しかったな。
でも何となく照れ臭くって…本当は観たくて観たくて堪らないのに「女の裸なんかにゃ興味はないよ」って素振りで、顔を手で覆ってタヌキ寝入りの仕草をしちゃったりして…
でもね、ダンサーが仰向けになって両脚全開した時、観音様の有難いお姿が目の前に現れた。
イチマサ社長とおらは狸根入りなんかしていられなくてね、恥ずかしながら蟹の目玉のようになっちゃったのさ。
心の中でパンパンって柏手を打って帰って来たんだけどね。

 あの日は、イチマサ社長の家の道端で隣組の面々が集まって藤の花見をしていた。
大きなU字溝にはコーコーと炭火が燃えさかり、カツオのたたきを作って食べる。
魚市場から届いたばかりの小イワシを、手開きしながら食べる刺身はじつに旨い。
オードブルも旨い。酒も旨い。ビールも旨い。
なにしろ道端での宴会だから、通行人たちの飛び入りが次々と現れる。
と…某県会議員先生が「俺も仲間に入れてくれ」といって一座に加わった。
飲み物はと、おら達…
『最初はビールだな』と議員先生…
はい。どうぞ。
『キサマ〜。おれに小便を飲ます気か〜
『こんなもの飲めるか〜。酒だ酒
はい。どうぞ。
『キッキッキッキサマラ〜』
おら達の隣組には三種の神器なるものがあって、隣組長が持ち回りで管理している。
三種の神器とは、コンクリートのU字溝と、昔の大便用のオマル(簡易便器)、それに女性用の尿瓶と男性用尿瓶の事だ。
オマルは料理の盛り付け用で、女性用の尿瓶は三角形になっているから日本酒用、男性用尿瓶はビール用に使っている。
検尿器とそっくりの紙コップを渡された議員先生?????。
そして尿瓶から注がれる生ビールと日本酒を小便と間違えたようだ。
つまみのオードブルの盛り付けられたオマルを見て又またびっくり仰天。
可及的速やかに議員先生が帰って行った後に、隣のおばさんが『マ〜美味しそう』
おばさんは調子の良いことで評判の人だ。
あとで届けてあげるからねと、イチマサ社長。
急いでオマルのオードブルを片ずけて、筋向いの食堂にカレーライスを注文してオマルに盛り付けてもらった。
『そのままではいまいち面白くない』とイチマサ社長の意見でひと手間かける。
ティッシュペーパーをクチャクチャにしてカレーの上に載せると、中々どうして、とってもリアルな盛り付けになった。
『おばさん、持ってきてあげたよ』と宅配した。
おばさんの『ギャァ〜』っと叫んだ口から総入れ歯が飛び出した。
イチマサ社長の家は薬局だから都合が良かった。
おら達は早速入れ歯接着剤の「タフグリップ」をプレゼントしてやった。

 あの日の夜は、イチマサ社長率いる「銀座漁業組合」の面々で魚捕りをしていた。
明日の夜、銀座漁業組合の総会に提供する魚が足りないからだった。
なにしろ家族同伴だから、20数名の頭数だ。
焼き魚は一人2匹は食べたい。
煮付けも食べたいし、炊き込みご飯も食べたいとなると、こりゃ大変だった。
魚は順調に捕れていた。
と、突然、真っ暗闇の中で、強烈なライトがおら達を照らし出すと同時に、怒鳴り声が聞こえてきた。
日本手ぬぐいで頬かぶりしているが、身体中に蜘蛛の巣が纏わりついたイチマサ社長の立ち姿は、異様な風貌であり、誰が見ても不審者そのものだった。
怒鳴りつけてきたのは、ラブホテルの管理人だった。
銀座漁業組合の面々は、ラブホテルの覗きに間違えられたが、警察署に通報されずに済んだことは、不幸中の幸いだった。

 今だから言えるが、あの日の夜もイチマサ社長と一緒だった。
河川敷でキャンプをして、したたか呑んだ。
キャンプファイヤーの向こうにホテルの風呂場の灯りが見える。
『ちょっと覗きに行こうか』という事になって、川を渡り始めたが、酔っ払っているから足元がおぼつかない。
流されないように一列横隊になって肩を組み、腰まで浸かって必死になって川を渡った。
ホテルの周りに張り巡らせてある有刺鉄線を潜り抜け、バラ藪もなんのその。
偵察隊が風呂場を伺うと、ウッシッシ。
居るぞ居るぞグットタイミングに、一人の女性が風呂からあがって脱衣室に向かうところだ。
押し殺した声で『イイゾ〜』
バラ藪の中を脱兎のごとく頬被りしたイチマサ社長が土手を登ってくる。
一列横隊の顔が窓越しに並んで立ち上がった時、パチンと言う音と共に脱衣室の灯りが消えて、浴衣を纏った婦人の後姿だけがシルエットとなって消えて行った。
一列横隊に並んだ一同の口は、あんぐりと開いたままだったが、顔も手も切り傷だらけだった。

 あの日の夜、イチマサ社長宅は飲めや唄えの大変な騒ぎとなった。
酒も旨いし料理も旨い。
小皿を叩いてちゃんちきおけさだ。
座布団を丸めて作った即席の獅子頭で獅子舞も始まった。
「おんたけやま」も出て宴は止まるところを知らなかった。
酔いつぶれて眠る者も出た。
酔客たちは、その寝顔を見て『この顔はいまいちだから、化粧をしてあげよう』
それぞれが一筆ずつ加えて仕上がった顔は、見事な顔立ちになって、それを肴にまた一杯だ。
宴が最高潮になった頃、玄関の戸が荒々しく開くと、小皿を叩いて上機嫌の同席者の妻君が入って来て、超高周波の声で『あなたこんな時に何やってんのよ!
妻君の眉毛はアナログ時計の10時10分を表し、目尻はピクピク痙攣し、口はヤカンが掛かるくらい尖がっていた。
宴は一瞬にして沈黙の時となり、一同は我にかえった。
そうだ、イチマサ社長のお母さんの葬式が先ほど終わって、今はその精進落しをしていたんだっけ。

 な〜むあみだぶ、な〜むあみだぶ、南無阿弥陀仏、な〜むあみだぶ〜、チ〜ン。
僧侶達がうやうやしく壇上に進む。
導師はおいらで…小柄な某司法書士先生が『おれも仲間に入れろ』という事で急遽茶坊主になった。
チ〜ン、ジャラ〜ン。ボ〜ン。
<チン>は仏壇店から買った来た。<ボン>は中近東の民族楽器で間に合わせたが、<ジャラン>は取り敢えず大きな鍋の蓋だ。
でもね…払子(ほっす)ってやつ…僧侶が持ってる埃払いの<はたき>みたいな物…
こいつは今時<はたき>なんて物は死語にもなってる代物だから代用品は無かった。
で…悩んだあげくに知り合いの僧侶に泣きついて<商売物>の本物の払子を借りてきた。
チ〜ン、拝礼〜。
チンッ。お直り下さい。
こたびは、まことにもってご愁傷様です。
イチマサ家に於かれましては、蝶よ花よと慈しみ、育てあげた娘を失うご両親の心痛はいかばかりか。
はたまたk家に於かれては、これから先、嫁と姑の飽くなき戦いが始まる訳でありまして、誠にもってご愁傷様です。
願わくわ……チ〜ン。
k家のご一族は呆気にとられて只々沈黙。
イチマサ家一族は立ち上がってやんやの拍手喝采。
突然、けたたましいアップテンポの曲が流れ、若い僧侶が唄い、壇上の僧侶たちが踊り始めた。
曲は堀内孝雄の「運がよけりゃ」…
あの日の結婚披露宴は、実のところ無事に帰れるとは思っていなかった。
でも…悪戯好きのイチマサ社長のたっての頼みだったからしかたなかったんだ。

 あの日の夜更け…
おいらはイチマサ家の座敷で奥様の添い寝役をしていた。
これだけはきっぱりと言っておくけど、奥様の浮気相手じゃないよ。
奥様は安らかな寝顔でね、そりゃ〜すごく幸せそうな表情なんだ。
実はね、奥様がその日死んじゃったんだ。
イチマサ兄貴は悲しくて悲しくて…とても一人じゃ居られないって…
それで、イチマサ社長と奥様の添い寝に付き合ったんだ。
おいらとイチマサ社長は切ってもも切れない義兄弟なのさ。
奥様に語りかけながら呑む酒の味は、旨くなかったけど悪酔いはしなかったな。
明日になれば、奥様の姿は完全にこの世から消えてしまうんだ。
だから、イチマサ兄貴は、残された僅かな時間を一生懸命奥様と過ごしているんだと思うよ。
でも、誰かに合い槌を打って貰いたかったんだろうね。
奥様の横で、イチマサ社長とおいらは添い寝をしたって訳。
翌日、奥様は灰になっって、この世からその姿を消してしまった。

 そして、あの日じゃなくて2013年2月8日の事。
電話の呼び出し音が聞こえるたびにギクッとする毎日が続いていた。
恐れていた訃報が入ったのは正午を回った直後だった。
おらが生まれてから70年、兄貴のようなイチマサ社長が不治の病に侵され帰らぬ人となった。
豪放らいらくに見えるが、すごく神経の細やかな人だった。
イチマサ兄貴と、もっともっと悪戯をしたかったのに…
愚痴は言うまい。
言ったところで生き帰りはしない。イチマサ兄貴は死んじゃった。残念無念
凍てついた闇夜、人々は暖かさを求めて日の出を待ち望む。
アルプスの山なみから太陽が顔を出して大地を温める。
温められた大地から新しい生命が次々と誕生する。
イチマサ社長は太陽だった。
西の空に沈む筈の太陽が、真昼の天空から突然消えてしまった。

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プラダ メンズ
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内 容 ニックネーム/日時
大事な人を失うって・・・他人事ではないかと思うほど実感がわかないものですね。自分自身の心なのに空洞ばかり・・・でも食事を作る時、主のいない服をたたむ時、ふとしたときに認めたくないって封印していた現実の波が打ち寄せてきます。でも泣いていられませんね。故人がそれをのぞんでなかったから。ブログは(笑)そして号(泣)!!ありがとう
銀座に金冠日食
2013/02/12 00:11

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